2013年08月25日

(憲法)尊属殺法定刑違憲事件



今日は、最高裁が既存の法律を初めて‘違憲'と判断した事件についてです。


まずは、日本国憲法第14条第1項を見てみましょう。


日本国憲法第14条第1項  
すべて国民は、法の下に平等であつて、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない。


法下の平等について定めた条文です。


では事案を見てみましょう。


【事案】
娘Aは日頃から父親Bからひどい虐待(性的虐待)を受けており、父娘の間で子供をもうけさせられるなどまるで夫婦のような生活を強制されてきた。ある日、娘Aは他の男性と結婚したい旨を父親Bに打ち明けると、激怒したBはAを監禁し、再び虐待を行った。そこで、Aは思わずBの首を絞め殺害し、逮捕された。


40年以上前の事件ですが、内容があまりにも過激です。娘Aはさぞつらい思いをしてきたことでしょう。


この事件はいわゆる「尊属殺」というもので、どんな事情があれ実の父親を殺害した場合は、当時の刑法200条(現在は削除済)が適用され、その法定刑は普通殺人罪の刑罰と比べて、極めて重く、死刑又は無期懲役に限られていました。(減軽規定はありましたが、最大限減軽しても懲役3年6カ月が限度で、執行猶予を付すことはできませんでした)


そこで、この尊属殺人罪(刑法200条)の刑罰が、普通殺人罪(刑法199条)の刑罰に比して極めて重く、法の下の平等を定めた憲法14条に違反するのではないかが争われたのでした。


判旨は以下の通りです。

・普通殺人罪の他に尊属殺人罪という規定を設けて、その刑罰を加重すること自体は憲法に違反するのか?


刑法200条の立法目的は、尊属を卑属またはその配偶者が殺害することをもつて一般に高度の社会的道義的非難に値するものとし、かかる所為を通常の殺人の場合より厳重に処罰し、もつて特に強くこれを禁圧しようとするにあるものと解される。ところで、およそ、親族は、婚姻と血縁とを主たる基盤とし、互いに自然的な敬愛と親密の情によつて結ばれていると同時に、その間おのずから長幼の別や責任の分担に伴う一定の秩序が存し、通常、卑属は父母、祖父母等の直系尊属により養育されて成人するのみならず、尊属は、社会的にも卑属の所為につき法律上、道義上の責任を負うのであつて、尊属に対する尊重報恩は、社会生活上の基本的道義というべく、このような自然的情愛ないし普遍的倫理の維持は、刑法上の保護に値するものといわなければならない。しかるに、自己または配偶者の直系尊属を殺害するがごとき行為はかかる結合の破壊であつて、それ自体人倫の大本に反し、かかる行為をあえてした者の背倫理性は特に重い非難に値するということができる。
このような点を考えれば、尊属の殺害は通常の殺人に比して一般に高度の社会的道義的非難を受けて然るべきであるとして、このことをその処罰に反映させても、あながち不合理であるとはいえない。そこで、被害者が尊属であることを犯情のひとつとして具体的事件の量刑上重視することは許されるものであるのみならず、さらに進んでこのことを類型化し、法律上、刑の加重要件とする規定を設けても、かかる差別的取扱いをもつてただちに合理的な根拠を欠くものと断ずることはできず、したがつてまた、憲法14条1項に違反するということもできないものと解する。



なるほど、まさにその通りという気がします。立法の目的自体は正当であり、憲法14条に何ら反することはないということです。



・では、尊属殺人罪の法定刑を死刑または無期懲役に限っている点において、刑罰が極端に重いがこの点は憲法に違反しないか?


普通殺のほかに尊属殺という特別の罪を設け、その刑を加重すること自体はただちに違憲であるとはいえないのであるが、しかしながら、刑罰加重の程度いかんによつては、かかる差別の合理性を否定すべき場合がないとはいえない。すなわち、加重の程度が極端であつて、前示のごとき立法目的達成の手段として甚だしく均衡を失し、これを正当化しうべき根拠を見出しえないときは、その差別は著しく不合理なものといわなければならず、かかる規定は憲法14条1項に違反して無効であるとしなければならない。
この観点から刑法200条をみるに、同条の法定刑は死刑および無期懲役刑のみであり、普通殺人罪に関する同法199条の法定刑が、死刑、無期懲役刑のほか3年以上の有期懲役刑となつているのと比較して、刑種選択の範囲が極めて重い刑に限られていることは明らかである。もつとも、現行刑法にはいくつかの減軽規定が存し、これによつて法定刑を修正しうるのであるが、現行法上許される2回の減軽を加えても、尊属殺につき有罪とされた卑属に対して刑を言い渡すべきときには、処断刑の下限は懲役3年6月を下ることがなく、その結果として、いかに酌量すべき情状があろうとも法律上刑の執行を猶予することはできないのであり、普通殺の場合とは著しい対照をなすものといわなければならない。

…尊属殺の法定刑は、それが死刑または無期懲役刑に限られている点(現行刑法上、これは外患誘致罪を除いて最も重いものである。)においてあまりにも厳しいものというべく、上記のごとき立法目的、すなわち、尊属に対する敬愛や報恩という自然的情愛ないし普遍的倫理の維持尊重の観点のみをもつてしては、これにつき十分納得すべき説明がつきかねるところであり、合理的根拠に基づく差別的取扱いとして正当化することはとうていできない。

…以上のしだいで、刑法200条は、尊属殺の法定刑を死刑または無期懲役刑のみに限つている点において、その立法目的達成のため必要な限度を遥かに超え、普通殺に関する刑法199条の法定刑に比し著しく不合理な差別的取扱いをするものと認められ、憲法14条1項に違反して無効であるとしなければならない。




立法の目的は違憲ではないが、それを達成するための手段(刑罰を死刑又は無期懲役に限っていること)が普通殺人の刑罰と比べてあまりにも重すぎて、この点は法の下の平等を定めた14条に照らして違憲だという事ですね。


注意すべきは、刑法旧200条の立法目的自体は違憲ではないが、その目的を達成するための手段である刑罰があまりに重すぎて違憲だという事です。


尊属殺人の規定を設けてその刑を普通殺人に比べて多少加重するくらいなら問題ないけど、極端に重すぎる刑罰は14条違反になります。


現在、刑法200条はこの違憲判決を受け既に削除されており、この事案の結末としては、娘Aは普通殺人罪の適用を受け、懲役2年6月、執行猶予3年を言い渡されました。


現代社会においては、自らの親や子供を手にかける事件がしばしば発生しますが、どんな事情があるにしろ人殺しはよくないですし、自分の親族を手にかけるなんて言語道断だと思います。


時代が変わって、人と人とのつながりが希薄化してきたことが原因なのかどうなのかよくわかりませんが、親はいつまでも大事にしてもらいたいものです。




お読みいただきありがとうございました。


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posted by 行政書士試験WEBアドバイザー YASUHIRO at 14:25| Comment(0) | TrackBack(0) | (憲法)人権 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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