2014年04月13日

(憲法)前文の法的性格


今回は、少しマニアックなところに触れたいと思います。


憲法は、まず最初に「前文」というものを置いています。


その内容には、憲法制定の目的・憲法の基本原理(平和主義・国民主権・基本的人権の尊重)が書かれているわけですが、じっくり読んだことのある方はあまり多くないのではないでしょうか。


言ってることが抽象的でよくわからない…そう思われる方も少なからずいらっしゃるかと思います。


そうなんです。言ってることは、基本理念なので極めて抽象的なんです。だからこそ、これを根拠として(規範として)裁判で争うことができるのかどうか、問題になるわけなんです。(前文に裁判規範性はあるのか?)


まず、前文の裁判規範性の前に、法としての効力があるのか、つまり、法規範性があるのかどうかについては、今日では争いはありません。

基本理念を唱えた抽象的な文言であるといっても、憲法の一部であり明文化されているわけなので、憲法としての効力は当然にあります。(つまり、国家を縛る効力はあると言える)

なので、改正するにあたっては、96条の改正手続きに則らなければなりません。(ただ、憲法改正限界論から改正できるかどうかということは別論)




では、裁判規範性について。


よく問題となるのは、前文第2項の「平和のうちに生存する権利」です。この平和的生存権を根拠として裁判で争うことができるのか…ということです。



言い換えると…平和的生存権には具体的権利性があるのかどうかということです。


これについては争いがありますが、通説は裁判規範性(具体的権利性)を否定しています。


理由は、前文は憲法の基本原理を定めたものであって、それが故に抽象的で、具体性を欠くからだというものです。


これに対して、肯定説は、前文以外の規定にも抽象的なものはあるし、それが裁判規範性を有している以上、前文だけ抽象的だからといって裁判規範性がないとするのはおかしいじゃないかと批判しています。



裁判所は何と言っているのか?


長沼事件控訴審判決(昭和51年8月5日)では、

憲法前文は、その形式上憲法典の一部であつて、その内容は主権の所在、政体の形態並びに国政の運用に関する平和主義、自由主義、人権尊重主義等を定めているのであるから法的性質を有するものといわなければならない。 … (前文)第二、第三項の規定は、これら政治方針がわが国の政治の運営を目的的に規制するという意味では法的効力を有するといい得るにしても、国民主権代表制民主制と異なり、理念としての平和の内容については、これを具体的かつ特定的に規定しているわけではなく、前記第二、第三項を受けるとみられる第四項の規定に照しても、右平和は崇高な理念ないし目的としての概念にとどまるものであることが明らかであつて、前文中に定める「平和のうちに生存する権利」も裁判規範として、なんら現実的、個別的内容をもつものとして具体化されているものではないというほかないものである。


として、前文の法規範性は認めていますが、裁判規範性は否定しています。


しかしながら、


イラクでの自衛隊の活動の一部が違憲であるとした名古屋高裁(平成20年4月17日)では、


現代において憲法の保障する基本的人権が平和の基盤なしに存立し得ないことからして、全ての基本的人権の基礎にあってその享有を可能ならしめる基底的権利であるということができ、単に憲法の基本的精神や理念を表明したに留まるものではない。 … 平和的生存権は、憲法上の法的な権利として認められるべきである。

そして、この平和的生存権は、裁判所に対してその保護・救済を求め法的措置の発動を請求し得るという意味における具体的権利性が肯定される場合があるということができる。 … 人の生命、自由が侵害され又は侵害の危機にさらされ、あるいは、現実的な戦争等による被害や恐怖にさらされるような場合、裁判所に対し当該違憲行為の差止請求や損害賠償請求等の方法により救済を求めることができる場合があると解することができ、その限りでは平和的生存権に具体的権利性がある。


として、法規範性、裁判規範性ともに認めています。


直接的な最高裁の判断こそないものの、学説・裁判所の考え方は、前文に裁判規範性を認める方向に傾いているように思われます。





お読みいただきありがとうございました。


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posted by 行政書士試験WEBアドバイザー YASUHIRO at 16:33| Comment(0) | TrackBack(0) | (憲法)総論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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